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第7話 クラスメート

Auteur: るるね
last update Date de publication: 2026-02-09 18:01:45

 一条修司いちじょうしゅうじ

 彼は鷹宮の高校時代の親友であり、そして陽菜にとっては三年間同じクラスだったクラスメイトでもあった。

 彼に関する記憶は、高校卒業と同時にすっかり薄れており、確か海外に留学したという話を聞いたような気がするが、それ以外の情報はほとんど残っていない。

 そもそも、陽菜と一条は朝に顔を合わせた時に挨拶を交わす程度の関係でしかなかった。

 ただ、鷹宮といつも一緒に行動していたために、自然と彼の存在が目に入ることが多かったが、それだけだった。

 「えっ、ひ、久しぶりです……一条くん?」

 「ふん? てっきり名前なんか覚えてないかと思ったけど?」

 ふたりが挨拶を交わしているのを見て、鷹宮は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに思い出したように頷いた。

 「ああ、そういえば陽菜さんも僕たちと同じ学校だったね。知り合いだったんだ?」

 「知り合いどころじゃないぜ。三年間同じクラスだったし、けっこう仲良かったよな? 藤野さん?」

 「……?」

 一条の突然の発言に、陽菜は思わず瞬きを繰り返し、戸惑った様子で彼の顔を見る。

 にこにこと笑う一条と、穏やかな表情で様子を見守る鷹宮の顔とを交互に見て、どう返せばいいのか分からず、口を開けたまま言葉を失った。

 「仲良かった」だなんて、一条は本気でそう思っていたのだろうか?

 陽菜が困っているのを見て、一条は遠慮なく声を上げて笑った。

 鷹宮はというと、長年の友人の性格をよく知っているからこそ、彼がからかっているだけだとすぐに察した。

 「修司、やめろって」

 「なんだよ、騎士様気取りか?」

 「違うよ。陽菜さんは大人しい性格なんだから、困らせるなって」

 鷹宮が穏やかに陽菜を庇うように言うと、一条の笑みはさらに深まり、その目には悪戯っぽい光が宿った。

 彼はじっと陽菜を見つめ、からかうような視線を向けながら、ふと思い出したように尋ねてきた。

 「……で? いつからそんなに仲良くなったんだ?」

 それは陽菜に向けられた問いだった。

 だが、彼女や鷹宮が答える前に、一条は肘で鷹宮を軽くつつきながら、茶化すように言葉を重ねた。

 「まさかとは思うけど……新しい彼女?」

 その一言に、陽菜は思わず目を見開き、呼吸すら止まりそうになった。

 焦った様子の陽菜とは対照的に、からかい半分の一条の発言に対し、鷹宮はただ小さく息をつき、どうしようもないというように肩をすくめると、申し訳なさそうに陽菜を見て微笑んだ。

 「ごめん、陽菜さん。彼、昔からこうなんだ。代わりに謝るよ」

 「い、いえ……鷹宮さんのせいじゃありませんから……」

 「ははっ、じゃあ俺のせいってことで!」

 「そ、そんな……いや、別に……」

 場の空気をまるで気にしない一条は、そのまま陽菜の困惑を楽しむように笑い続け、そんな彼に対して、陽菜も鷹宮もただ苦笑するしかなかった。

 その後、鷹宮は陽菜を駅まで送ってくれることになった。

 道中、彼は一条家の会社が近くで新ブランドの立ち上げを準備していること、今日はその関係で昼に会う約束があったことを説明した。

 ちょうど一条のグループ会社の一つがこの近くにあり、それでこの辺りに来ていたのだという。

 思いがけず陽菜に会ったことに、鷹宮自身も驚いたらしかった。

 「今日は修司の車で来たから、送ってあげられないのが残念だけど」

 「い、いえっ、そんな! 鷹宮さんが駅まで送ってくださるだけで、十分ありがたいです」

 「そんなに遠慮しないで。せっかく会えたんだから、これくらいはさせて」

 鷹宮の声は、冬の冷たい空気の中にあっても不思議と温かく、春の陽だまりのように心地よかった。

 その声をもっと聞いていたくて、陽菜はつい話題を探しては会話を続けようとしてしまう。

 その間ずっと、少し後ろを歩いていた一条は、興味深そうにふたりの様子を見ていたが、何も言わず、ただ静かに見守っていた。

 まるで、何かを面白がっているように。

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